【映画】インクレディブル・ファミリーが凄すぎてもう何だか色々混乱する件【ネタバレ超あり】
映画、インクレディブル・ファミリーを観てきましたよ。
ネタバレするので見てない人はマジで読まないでください。
家事!育児!世界の危機!
とか言ってるけどぶっちゃけどうでもいいです。そこは。いやまぁ、よくもないんだけど。育児とヒーローの両立は大変!みたいな話ではないのです。
ヒーローと大衆の関係を通して今の社会のあり方を問う
意外に骨太なのです。私の見立ててでは。見た人は分かると思いますが、あるシーンで明らかなメッセージが語られます。これがこの映画の本質です。
あらすじは超単純。主人公はヒーロー家族。父・母・長女・長男・次男の5人家族全員が主人公だと思う。多分。それぞれがヒーローとして特殊な能力を持っています。ただ、世界はヒーローの暴走を恐れ、彼らに法規制をかけています。正義のために働き、力を持っているのに不遇な生活を送るヒーロー。そこにある若手資産家が声をかけてきます。彼は根っからのヒーローファンで、世界中に広がる規制を廃止したい。そのために、ヒーローの力を見せなければならない。そう考え、まず家族の中からお母さんを抜擢。いろんな難事件を解決させるわけです。一方、残されたお父さんヒーローは家事・育児に悪戦苦闘…そうこうしている間に強力な敵が現れ…お母さんヒーローがピンチになって…
みたいな感じ。
ま、ほのぼの子供も一緒に見れるファミリー映画って感じでしょ?(実際、それは確かにそうなんだけど)
しかし、あるシーンで敵がウワッと喋ります。グワッと語ります。で、この内容がインクレディブル・ファミリーをある次元まで引っ張り上げます。
「ヒーローを待ち望む大衆とはいったい何だ。彼らはただ画面の中を見つめ、ヒーローが勝っただなんだと騒いでる。自分の人生を生きようとしない」
ざっくり言うとこういうことを言うんです。
さて、先程のあらすじに戻りましょう。
お父さんヒーローはずっと自分の努力が報われていないと思っていました。しかし、ひょんなことから家事や育児。つまり日常を生きるようになった。はじめは慣れない日常に戸惑うものの、少しづつ日常を受け入れていきます。「自分の人生を生きた」のです。
マーベルを筆頭としたヒーローもの。もちろん、ピクサー自身も含めた新しいヒーロー像の再提示を実験しているんです。
しかも、当然ながら現代への風刺も入ってるわけですね。誰でもスマホで情報を受け取れる時代。そこに主体はなくただ他人の人生に自分を投影する。そもそもヒーローとは画面で観るものです。古くはウルトラマンや仮面ライダーもそうです。しかし、今は安く、簡単に感動や興奮が受け取れる時代。ヒーローがお手軽に消費される時代なんです。それでいいのか。そして、一日のうちほとんどを「画面」を見てすごす現代社会への強烈な問いかけ。
さらにここから踏み込むインクレディブル
ここまでならある話なんだけど、それでもヒーローちゃんと活躍するんだよねぇ…それがすごくて。そこも受け入れた上で次に進む。というか。ヒーロー像を否定して、アンチ・ヒーローになるのはたまに見かけるんだけど、それでも何事もなかったかのように問題解決してチャンチャンにするんだよ。ヒーローが日常を受け入れてさ。
ただし、ヒーローの日常との距離は描いたけど、大衆のヒーロー(感動や興奮と置き換えてもいい)がどう消費されるべきなのかは提示されません。あえてだとは思いますが。自分たちで考えろってことなんでしょう。多分ね。
なぜ今インクレディブルをもう一度やるのかという一本筋の通った思想を、どうやったら伝わるかを考え抜き、エンタメにした。あまりにも完成度の高い。スゴすぎる作品でした。
※みんなが言ってるので書かないけど「カメラを止めるな」もスゴイっすよ。今年1はこれかなー。2位が「インクレディブル」、3位は…「万引き家族」か「ラッカは静かに殺されている」かなぁ…今年はあんまり見れてないので後半がんばります。
※マーベルを引き合いに出してるけど嫌いってわけじゃないです。好きでもないけど。インフィニティーウォーは良さが分からなかった。ブラックパンサーは素晴らしかったです。
最後に今日の1枚。